May J.さん ”なりふり構わず”から開けた活路
2014年、映画「アナと雪の女王」の日本版主題歌を担当し、
それをきっかけに、多くの人にその歌唱力を評価されるようになりました。
そのMay J.さんは、ブレイクの少し前までは「どん底」状態にありました。
どんな「どん底」であり、そこからどうやってチャンスをつかんだのか、
ご本人の手記をお読みください。
小さいころから、歌が大好きでした。
十八歳で歌手デビューしてから、なかなかヒットを出せなくても、
歌を歌えるだけで毎日が幸せでした。そして懸命に、誠実に力を尽くせば、
きっといつか多くの方に私の歌声を届けられる……
そんな希望を抱いていました。その希望を見失いかけたことがあります。
デビュー5年目、6枚目のアルバムを出したときのことでした。
そのアルバムは、なかなか成果を出せない私にとって、
「正念場」の1枚でした。今度こそ多くの方に聞いてもらえるよう、
渾身の力で臨まなくてはいけない。そう考えて、全曲作詞にも挑戦。
自分の中にあるすべてを注ぎ込んだ一作でした。
しかしその作品は、思ったような結果を出すことが出来ずに終わったのです。
さすがの私も、暗い気持ちになりました。
それまでは、どのような結果でも
「次がある」と思えたのですが、この時ばかりは無理でした。すべてを出し切ったのにダメだったのなら、
次は何をすればいいのか……。完全に、道を見失っていました。
「正念場」で自分を見失ったというMay J.さん。
どうやって、ここから立ち直ることができたのでしょうか?
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テレビのカラオケ採点番組への出演オファーを受けたのは、
まさにそんなときでした。私は二つ返事で、承諾しました。
「プロなのに、カラオケ?」
「しかも素人の方と競うなんて……」
などという迷いは、まったくありませんでした。目先のプライドにこだわっている場合ではなかったのです。
そのとき考えたのは、
「たとえカラオケでも、心に響く歌を歌おう!」
ということです。採点も重要ですが、それ以上に、
視聴者の心を揺さぶりたい、と思っていました。結果は、予想以上の大反響。
私の声は多くの方の耳に届き、
私のキャリアは、この番組で大きく転換したのです。あのとき、私が「どん底」にいたことは、
むしろ幸運でした。打つ手がなくなって途方に暮れていたからこそ、
「どんなチャンスも逃すまい」と思えたのですから。そうしてなりふり構わず飛び込んだおかげで、
歌手としての幅も広がりました。R&B歌手として活動してきた私は、
初めてJ-POPや歌謡曲を歌い、新たな可能性に気づきました。自分の好きなR&Bを、
自分の言葉で歌うことだけが「表現」ではない、
と知ったのです。多くの方が聴きたがるような、
よく知られた名曲を歌うこともまた、
人の心を動かす素晴らしい表現方法だと思いました。そんな私にとって、
映画「アナと雪の女王」のエンディングで、
主題歌「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」を
歌わせていただいたことは、とても有り難く幸福な経験でした。とはいえ、あのときは思わぬバッシングも受けました。
ただ戸惑い傷つきました。
それでも、私の歌う「レット・イット・ゴー」を
愛してくださる方もいます。ライブで歌えば、客席の方々が皆笑顔になります。
「そんな皆さんに歌声を届けるのが、私の役目」
だと思えば、勇気と元気が湧いてきました。昔の私ならこうは思えず、バッシングに負けていたかもしれません。
どん底を経験したことは、ここでも役立っているようです。
大好きな仕事でも、辛いことはある。
注目を浴びると、悪く言われることもある。
どんな物事も「良いことばかり」ではないと、
自然に受け止められるようになりました。そして、どん底でチャンスをつかんだ経験から、
物事が「悪いことばかり」でもないことを知ったのです。一喜一憂せず、そのときにできることを一所懸命すれば、
きっとどんなことも乗り越えていける。そう信じて、これからも歌い続けていきたいと思っています。
出典元:PHP特集「いいことも悪いことも受け止める」より
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