矢祭もったいない図書館のこと
福島県矢祭町は、政府が推し進めるいわゆる「平成の大合併」が、
小さな町や村の切り捨てに繋がると考え、郷土を守るために
市町村合併をしないことを宣言。
自立財政を確立するために人員の削減を行いながら、
課長以上の役職者は、町長を含めて4つ以上のポストを兼任、
庁舎の掃除まで行うという、独自の歳出削減を行いました。
さて、この矢祭町には図書館がなく、
町内には書店すらなかったそうです。
そのため町は図書館を作ることを考えます。
しかし、普通なら10億円の費用がかかるというのに、
予算からは1億円しか歳出できません。
図書館の建物は古い武道館を利用することにしました。
ただ、そのまま使えるわけではなく、
大改装が必要でした。
その費用はなんと1億円。
十分に節約したにもかかわらず、
建物だけで予算を使い切ってしまったのです。
そこで、町では蔵書の寄贈を全国に呼びかけました。
しかも、送料は寄贈者が負担するというもの。
周りからは「ずうずうしいお願いではないか」
という不安の声も少なからず上がりました。
非常識な前例を作りたくないという他の自治体から、
抗議の電話を受けることもあったといいます。
しかし、そんな心配も杞憂に終わったのです。
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町長はこの町を合併対象にしたくない趣旨、
図書館の無い町にささやかな一つの図書館を設けたい趣旨、
しかしながら、予算不足のため協力を仰ぎたい意向、
などなどを全国に訴求したのです。
全国からは、それに答えて蔵書寄贈の申し出が殺到し、
その件数は初日だけで300件を超えました。
中には車にたくさんの本を積んで届けてくれる人や、
若くして亡くなった息子の形見の本を
寄付してくれた人もいたそうです。
また、寄贈された本の多くに、
町の改革を応援するメッセージが添えられていたといいます。
この年の1年で全国から
約43万5000冊の寄贈を受けることになりました。
2006年、日本中の真心こもる蔵書を保有する図書館として、
矢祭町の図書館はオープンしました。
その名は「矢祭もったいない図書館」。
小さな子どもから高齢者まで、
毎日多くの人々で賑わっているそうです。
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