米国とソ連にかけた小さな架け橋
子どものころ、第二次世界大戦の悲惨な状況を伝える
映画や写真を見て「戦争のない平和な世界を」と
望んだ人は多いでしょう。
しかし、実際に何か行動を起こすのは難しいもの。
そして大人になればなるほど、
その夢は実現しないように思えてしまいます。
1980年代、米国とソ連は当時冷戦状態にあり、
両国が核兵器の開発を進めるなど、
敵対関係が強まっていました。
しかし、大人たちはそのような状況に
不安を抱きながらも、政府の対応に
期待するしかありませんでした。
そんな中、アメリカのサマンサ・スミスという
10歳の少女が、母親から米国とソ連の問題について
書かれた雑誌を見せられます。
サマンサちゃんは、表紙に掲載されていた、
当時の書記長、アンドロポフの写真を見て、
お母さんに聞きました。
「なぜみんな本人に戦争をするつもりがあるかどうか
聞かないの?」
そして、お母さんが「あなたが聞いてみたら?」
と提案すると、サマンサちゃんは、
すぐに手紙を書き始めました。
「親愛なるアンドロポフ書記長さま。
私はソ連とアメリカが核戦争に突入してしまうことを
心配しています。あなたが戦争をしたいのかどうか、
したくないのなら、どのような方法で
戦争を阻止するのかを知りたいのです。
あなたは世界やアメリカを征服したいのでしょうか。
神様は私たちが平和に暮らせるように世界を作りました。
戦うためではないのです(要約)」
平和を望む彼女の思いは、ソ連のマスコミにも取り上げられます。
そして手紙を投函してから約5カ月後、
アンドロポフ書記長からの返事が届きました>>>
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そこには、彼が平和を望み、
核兵器を無くしたいと思っていることや、
ソ連のことを知ってもらうために、
サマンサちゃんをモスクワに招待したい
ということが書かれていました。
その後、11歳になったサマンサちゃんは、
アンドロポフ書記長の招待を受け、モスクワを訪れます。
そして、史上最年少の親善大使として2週間滞在。
彼女の帰国後には、ソ連からも11歳の少女が
アメリカを訪れることになりました。
サマンサちゃんは、それからも親善大使として活躍し、
日本で開催された国際子どもシンポジウムにも参加しています。
その中で彼女は、毎年2週間ずつ、
アメリカとソ連の代表者が「孫」をお互いの国に
滞在させることを提案します。
それは、孫が訪問していた国を攻撃したくはないだろうという、
彼女の素晴らしいアイデアでした。
なお、小さな親善大使として活躍した彼女、
サマンサ・スミスは、自らの体験をもとに著書を執筆し、
その連続テレビシリーズにも出演しました。
しかし、そのテレビの撮影を終えた後、
父とともに飛行機で自宅に帰る途中、
不運な事故に遭い、死亡してしまいます。
13歳のはかない命でした。
サマンサちゃんの葬儀では、1000人ほどの参列者から
その若い命を惜しまれました。
また、モスクワでは平和のチャンピオンとして賛美されました。
レーガン大統領(当時)も、サマンサちゃんの母ジェーンに
お悔やみの手紙を寄せました。
多くのアメリカ人が、本当に何百万という多くの人々が、
あなたと同じ悲しみを感じています。
彼らはまた、サマンサの素敵な笑顔、彼女の意思、
そして彼女の愛くるしい精神を心に留め、
彼女を永遠に忘れないでしょう。
彼女は、この時期の冷戦を鎮める使命のために、
束の間、地上に降りてきた天使だったのではないでしょうか。
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