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【修羅場】私は小さい頃祖母の家で暮らしていた。しかし祖母の家で長らく過ごしていたのに記憶がほとんど抜け落ちている。おぼろげな記憶をたどってみると…

私は毎朝食パンをオーブンレンジで焼いて食べる習慣があった
祖母の寝室は仕事柄、幼い私には危険なものがあったので、
私はリビングに寝かされていた

朝起きると先に起きて台所にいる祖母が食パンをひと切れだしてくれる
それをオーブンレンジに入れなにか操作をすると、
背面にあるM型のものが倒れてきてパンにかぶさるようになり、
それが赤くなってパンが焼き上がる
焼き上がったパンにイチゴジャムを塗って食べる
それに大きな缶に入った粉を溶かして作るレモネードを
あわせて飲むのが私の朝食

大きな缶は高いところにあって、祖母が毎日取ってくれていた
これが私の中に残る色濃く褪せない祖母との記憶

ある朝私が目を覚ますと、台所に祖母はいなかった
寝ぼけた目をこすりながら探すと、祖母はまだ布団の中にいた
祖母は声をかけても譲っても眠ったままだった

私は自分で食パンを出し、オーブンレンジに入れた
でも操作がわからず、出来上がったのはあったまってふにゃった食パン
私はそこにイチゴジャムを塗った
レモネード缶も届かなくてキッチン台によじ登ったが、
缶を落として中身をぶちまけてしまった

私は水でパンを流し込んだ
家の隣にあるブランコを飽きるまでこいでいたが、
降りるときにすっ転んで膝をかなり擦りむいた
夜になっても祖母は起きなかった
私は角砂糖を一つ口にいれて、いつも通り8時には眠りについた

翌日も祖母は起きてこなかった
朝方母親から電話があったので、おばあちゃんがお寝坊してるけど
元気だよと伝えて切った
その日もパンはふにゃふにゃで、水で流し込んだ
その日は膝が痛くて、落書き帳にバラの絵を描いた
テレビで描き方を教える番組があったから、
それを参考に朝から夜までずっと描き続けた

その日の夜も角砂糖ひとつ口に入れて寝た
その翌日、最後の一枚の食パンを今度はそのまま食べた
空腹が紛れなくて、イチゴジャムをそれだけで貪った
ベタベタになった手を布巾でふいたら、
前にこぼしたレモネードの粉のせいで余計ベタベタになった

布巾は雑菌のせいか異臭を放っていた
リビングは布巾の雑菌でとても臭かった
膝の傷はぐじゅぐじゅになって白くなっていた
一日空腹をごまかすために、
角砂糖をなめながらテレビをぼーっと見ていた
その翌日、祖母を起こしに行くと、
祖母がおねしょをしていたことに気づいた

私は見てはいけないものを見た気がして、私の布団を祖母にかけた
祖母に怒られる気がして、私は一日外を歩き回っていた
空腹は限界に来ていた
夕方になると野犬がでるので、犬の遠吠えを聞いて慌てて帰った


その翌日、目を覚ました私は外に出て歩き続け、
その先で見つけた人様の畑に入った
柑橘類やビニールハウスのイチゴを食べまくっていた、
何かにとりつかれるように
夕方頃、畑の持ち主が軽トラでやってきてとっつかまった
数日風呂に入っていないボロボロの身なり、
変色した膝の傷、かいだことのない不快な臭い

その後はめまぐるしく動いたので記憶がかなり途切れている
軽トラに乗ったと思ったら救急車に乗せられ、
大きな車に乗ったと思ったらパトカーに乗っていたり
何故か車内のことばかりをよく覚えている
その後私は黒い服を着て、祖母と最後の別れをしていた
死というものが何なのか、その時最後まで解らないし、
私はまだ祖母が死んだという実感が沸かないままでいる

今までにあった修羅場を語れ【その8】

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