渡る世間の鬼にくたびれた時、やっと人に会えた

口数の少ない主人が、時折思い出したようにつぶやくことがある。
主人は、今、小さな店を営んでいる。
父親の後を継いで。
いや、昔のドラマにあったように、
「チチキトク、スグカエレ」の電報で
呼び戻されてしまったのだ。
家業を継ぐのを嫌い、彼は東京で会社員として勤めていたが、
急きょ帰郷してみると、父親は元気であった。
彼を待っていたのは、父親が手を広げ過ぎてしまい、
経営の悪化した会社の立て直し、
いえ後始末であった。
この日を境に彼の人生ドラマが始まったのかも……。
当時26歳。
二年後、不安は的中。
会社は不渡りを出して倒産。
翌日の新聞でも報道され、
全店シャッターを降ろしている会社や自宅に
債権者が怒涛のように押しかけて、
「金返せ!」「金がないなら品物を出せ!!」と、
怒鳴りまくるのであった。
それまでは、「何とか取引お願いします」と、
何度も頭を下げに来た人たちであったのに。
親には親類宅に身を寄せてもらい、
主人は、深夜になるのを待って、
隠れるように会社の後始末をした。
夜が明ける頃には、車で代金の集金に走りまわる、
そんな毎日の連続。
体はくたくたに疲れていても、眠るとか、
体を横にして休むなど、できる状態ではなかった。
いや、会社がつぶれたことで迷惑をかけた人が
たくさんいるのだから、死に物狂いで現金を回収して、
少しでも返すことが今、自分がしなければならないことだと、
死を覚悟でハンドルを握って走り続けていたと、
後年、話してくれたことがあった。
集金に行った先では、
「倒産したのだからお金は払う必要はない。帰れ」
と言われるのである。
取引で品物を納品しているのに……。
それも一軒、二軒ではなく、行く先々で。
「払ってもらうまで、ここで待たせてもらいます」と、
回収先の入口に座り込んで懇願する彼に、
「金はない」と、素知らぬふりをする人たち。
ある所では、半日以上座り込んでいたら、
「そんなに金が欲しけりゃくれてやる」と、
顔面にお金を叩きつけられたことも。
男だもの、人間だもの、
「そんなお金なんかいらない」
と、言い放って帰ってきたかっただろうに、
彼は、散乱したお札を一枚一枚拾い集めてから、
「ありがとうございました」
と、礼を述べて次の集金へ向かったそうです。
”泣いたら負け”の一心で。
商売で、注文の物品を納入したのだから、
代金を請求するのは当然のこと。
それなのに、泥棒のごとき扱いをされても我慢して、
耐え忍んで”お金を返してもらう”……。
ある日、青森の取引先へ行った時、
”今日もケンカ腰で交渉か”と、
気を重くして店先に入った彼に、
そこのご主人は、予想外の言葉を投げかけてくれた>>>
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そこのご主人は、
「いつもお世話になってありがとうございます。
お父さんは元気にしておられますか?」
と、穏やかに、心配げに声をかけてくれた。
全身鎧(よろい)をつけて、戦場で戦いを挑むような覚悟の彼は、
何カ月ぶりかで”やっと人に会えた”と思ったという。
会社の事情も既に知っていて、
ご主人は黙って代金を全額払ってくれ、さらに、
「こんなに遠くまで大変でしたね。
今日はもう遅いから、青森に泊まっていきなさい。
宿屋も用意させてもらいましたから」
「ありがとうございます。
でも、次のところへ急いで行かないと」
「だまされたと思って、今日は私の言うことを聞いてくれませんか。
今、行っても、明日の朝になってから出発しても、
そんなに違いはないのじゃないですか。
焦る気持ちは、分かります。でも、こんな時にこそ体を休めなさい」
何回かの押し問答の末、ご主人の厚意に甘え、
用意してくれた温泉宿に世話になった。
宿屋の風呂場の鏡に映った自分の顔、
全てを敵にしている人のような形相の自分に、彼は驚いた。
”こんな顔をしている自分では、万一お金は返してくれても、
次回の取引はしてもらえない”
”商売は物品の売買ではない”
”商売は人についてくるのだ”
と、そのご主人によって気づかされたのだと思う。
その後、集金もほとんど回収し、会社も株式会社から有限会社になり、
父親ではなく、主人が代表となり、細々ながら昔の名前で、
店をやらせてもらっている。
会社が倒産する頃に出会った私たち。
人一倍心配性の私が、
「結婚どころでは……」と躊躇する彼に、
「結婚しよう!」と逆プロポーズしてから十数年。
お金も大事。
あっても邪魔になるものではない。
でも、お金より大事なものが何なのかを知っている、
この家族の一員になれた喜びがある。
どん底から這い上がった主人の言うことに間違いはないと、
確信して暮らせる安心感がある。
それだけで私はいいのである。
日々のささいなことにも感謝の言葉を自然体で言ってくれる主人に、
幸せをいつも感じている。
例えば、今、主人はお風呂に入っている。
風呂上りの主人のために、冷たい麦茶を用意しておく。
「麦茶、どうもありがとう」
すべてこんな調子。
でも、私の強力なライバルもいる。
愛犬レオである。
主人は、毎朝、毎晩、
「レオ、長生きするんだぞ、レオはパパの命だからな」
と、声かけをしている。
妻の私は……?
いつの日か、私が命だと言ってもらえるように
がんばらなくては。
出典元:第15回NTTふれあいトーク大賞 優秀作品集
A.S.さんの作品「あした、青空」より


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